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見世物小屋

超短文書き散らしブログ

   

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018. 右手と、左手(エムゼロ / 影沼×伊勢)



随分とご無沙汰でしたが、うちのエムゼロサイトのメインCP影沼×伊勢弟、久々の登板でございます。
ちなみに一見攻受がひっくり返って見えるのは、仕様です(笑)
最初は伊勢がガンガン行ってたのが、いつの間にか影沼にひっくり返されているっていうのが、うちの影伊のスタイルなので!!





上映期間も終了間際となっている作品だけに映画館の中は人もまばらで、並んで座っている影沼と伊勢の周囲一帯はがらんとした空席になっていた。薄暗い映画館の中、ただ1つ明るい目の前のスクリーンを見ようとすればどうしても視野は狭くなる。その明るさは、それ以外の周囲の黒いシルエットを排除しようとでもするかの様に存在を主張し、影沼の視線を吸い寄せるのだ。
そしてシルエットは薄闇と大音量に溶け、その輪郭を極めて曖昧なものにしている。だが、隣に居る彼の気配だけはそこに溶け込む事無く、視界の隅にしっかりと存在していた。そのせいか、時折この薄暗い密室の中で彼とたった2人だけの様な錯覚を起こしそうになる。



肘掛けのドリンクホルダーに置いていたオレンジジュースを飲もうと、ふと手元に目をやると、そこには伊勢の左手が無造作に置かれていた。ちらりと彼に視線を向けるが、彼はそれに気付いた様子も無く、スクリーンに見入っている。
その邪魔をしない様にと、影沼はそっと紙コップをホルダーから抜き取ろうとすると、伊勢がちらりとそれに視線を向けた。だが、特に気にした風でも無く、再びスクリーンに視線を戻す。左手は、そこに置かれたまま。

しかし、影沼がオレンジジュースを飲んでカップを元の位置に戻したその瞬間、伊勢の左手がすっと動いて影沼の右手を掴んだ。予想だにしなかった突然の彼の行動に、驚きの余り小さく声を上げてしまったが、それは映画の大音量に呑み込まれて掻き消される。
”公共の場所で手を握られている”という状況に、咄嗟に目だけで周囲を素早く見回したが、薄暗い映画館の中、それも上映真っ最中という事もあり、伊勢の突飛な行動に気を留める人間は誰も居ない様だった。いくら恋愛関係が成立しているとは言えども、それとこれとは全くの別問題というか、それでなくとも目立つ事が苦手なのに、こんな公衆の面前で手を握られるだなんて…正直、羞恥心で倒れそうになる。今この瞬間、座っていて本当に良かったとすら思うのだ。

そして影沼が1人で動転している間も、伊勢はそれまで通り悠々と映画を鑑賞していた。動揺の余り『何してるんだ』と必死に視線で訴えていた影沼の気配を感じたのか、ようやく振り向いて、へらりと緩んだ笑みを浮かべると…また、スクリーンに視線を戻してしまった。もちろん、手はがっちりと繋がれたまま。

どうやら彼に手を離すつもりはこれっぽっちも無いらしいと悟った影沼は、小さく溜め息をつく。まだ、心臓の鼓動が収まらない。元々色が白い方であるし、顔も相当赤くなっているはずだ。とりあえず、ここが薄暗い映画館で本当に良かった…と、思う。
繋がれた手から彼の体温が伝わって来て、きっと同じ様に自分の体温も彼に伝わっているのだと思うと、何だかほんのりと心地良いのと同時に、やけにむず痒い気分になって来る。これまで形の無い感情だけだった色恋のそれに、体温や触覚というリアルな実感が絡んで来た事で、いまいち掴み所の無かった恋愛感情らしきものの輪郭が、よりくっきりと浮かび上がって来た様な気がするのだ。今この瞬間…恋をしているという、実感が。



上映が終わり、場内が明るくなりかけたその時、伊勢はようやく影沼の右手を解放した。顔の火照りも幾分収まって来ていたし、影沼は何事も無かった様に立ち上がった。だが、その視界に飛び込んで来たものは、


「………伊勢」
「なに?」
「…顔、真っ赤」
「………わわわ分かっとるわ!!あんまこっち見んなよ!!」


 

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