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見世物小屋

超短文書き散らしブログ

   

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005. だけど貴方は気付かないでいて(振り / 篠岡と阿部と三橋)



朝ごはん作り@合宿。





お世辞にも余りリズミカルとは言えない包丁の音が、すぐ横から聴こえて来る。使い慣れない包丁を握り、野球をしている時にも劣らない真剣な表情で、手を切らぬ様慎重に野菜を切る阿部を横目でちらりと見上げる。だが野菜を切るのに神経を集中している彼は、そんな篠岡には気付かない。

クラスメートで、同じ部活で。それでも、普通こんな風に一緒に泊り込んで朝から並んで料理をするなど、あり得ない事だ。公私混同はしないと決めてはいるが、頭でそう命じていても身体はどうしても正直で。阿部のすぐ向こうには、やはり同じく慣れない手つきでピーラーを使ってニンジンの皮を剥いている、三橋が居るというのに。


「なぁ篠岡、こんなもんでいいわけ?」
「………えっ?…あ、うん、上手上手!みっ三橋くんは!?皮剥けた?」
「剥けた、よ!」
「あっいいね、綺麗に剥けたね!じゃ次はこっちをね…」


余りにも当たり前に、彼がそこに居るから。常に視界の中に居るから。この心地良い距離感の、何ていとおしい事か。一緒に話したり、笑ったり、料理をしたり。今の自分は幸せ者だ。

…本当に、幸せ者だ。


 

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