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見世物小屋

超短文書き散らしブログ

   

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004. 曇り時々涙(テニス / 桜井と伊武)



全国大会敗退直後。





泣かなくなったのは、いつからだろう。
最後に泣いたのは、いつだっただろう。



フェンスにもたれて座る伊武が、ぼそりとそう呟いた。俯き加減の顔は長い黒髪に隠されて、その表情は窺い知れない。声の調子もいつもと変わらない低く淡々としたものだったが、頭上に垂れ込めたどんよりと低い灰色の雲と手首に巻かれた包帯のせいか、その姿はやけに痛々しく見えた。桜井は曇天の空を見上げる。きっともうすぐ、雨が降って来るのだ。

そうしたら、ここから立ち去る事にする。自らの涙で悔しさを洗い流せないのなら、雨で全てを流してしまえばいいのだ。流して、そしてまた立ち上がればいい。そういった事に他人の力を借りるのも、弱みを見せるのも良しとしないのが、伊武という人間であるから。だから、あえてここから立ち去るのだ。


大丈夫、止まない雨は無い。


 

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