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見世物小屋

超短文書き散らしブログ

   

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023.かごめの見る空(ガンダム00 / ソーマとマリーとアレルヤ)



お久し振りの見世物小屋更新は、これまたお久し振りの00です。

00はアニメ自体は自分の中でトップ3に確実に入るくらい好きな作品なんですが、どうにもこうにも書く方は苦手で、毎回大して長さも無いのに非常に難産になるという…。
だけど、たまに衝動的に書きたくなるんですよね~のた打ち回るのは分かっているというのに!(笑)

時間軸的には、2期終了後と劇場版の間の話になります。色々捏造酷いけどね!






『ねぇアレルヤ』
『何だい?』
『地球の空って、とても美しいのね』


まどろむ意識の中、アレルヤに語りかけるマリーの声が聞こえて来る。元々の持ち主である彼女に身体の主導権を明け渡しているソーマは、その声に耳を傾けた。軍からも離れ、慕っていたスミルノフ大佐も戦死し、”表”に出る理由の無くなったソーマは、もう長い事こうして意識の深みでたゆたい続けている。

地球の空。

その言葉に、ソーマは空を見上げる。マリーの視覚を通して見るそれは、あの暗い宇宙に繋がっているとは思えない程の、澄み切った鮮やかな青だった。吸い込まれそうに深いその色に、思わず息を呑む。
思えば自分もマリーも研究所で人工的に生み出された存在であり、ソーマが超兵として軍に配属されるまでは、その外にすら出た事が無かったのだ。軍人になってからも、”空”と言えばあくまで戦闘の舞台であり、”美しい”などとは考えた事も無かった。

『不思議だわ…モビルスーツで飛行してた時はそんな事思わなかったのに、こうやって地上から見るとこんなに綺麗に見えるなんて』
『まぁ確かにあの中じゃ、そんな事はあんまり考えないよね』
『私、研究所に居た時は目が見えなかったし、表に出てからはずっと戦いだったでしょ?アレルヤと旅する様になって、やっとこの世界の事が色々分かって来た様な気がする』
『僕だって似た様なものだし、いわゆる”普通”の生活っていうのした事無かったから、まだまだ知らない事はたくさんあるよ。だからさ、これからもっといろんな事知ってけばいいんじゃないかな。…君も、ソーマも』

アレルヤの口から突然自分の名前が出て、思わずぎくりとする。愛している相手の中に存在する全く別の人格など、普通に考えれば邪魔なだけではないかと思うし、それにもう長い事外には出ていないのにも関わらず、彼はこうして時折ソーマを気遣う様な言葉を言う。
初めの内こそ、ソーマの存在に戸惑い、ソーマが表に出ている時でさえもあくまで”マリー”と呼び続ける彼を疎ましく思う事もあったが、今となってはアレルヤがソーマを受け入れた様に、ソーマもアレルヤの存在を受け入れていた。彼の不器用ながらも周囲を気遣い、想うその優しさが、何処かあの大佐に通じる様な気もしたのだ。

マリーが言う通り、戦いから離れて旅をする様になって、これまで自分が信じて来た”世界”とは、そのほんのちっぽけな一部分に過ぎなかったのだという事を、ソーマも徐々に理解して来ていた。
己の一番のアイデンティティであった”超兵”という概念も、ごく普通の日常を送るには何のアドバンテージにもならない事も、分かって来た。ソーマ・ピーリスとして”生まれた”時から、超兵として…そして、軍人としての生き方しか教えられて来なかったのだ。『知らない事はたくさんある』なんていうレベルでは無い。きっと、自分には知らない事の方が圧倒的に多いのだ。


『ソーマにも見せてあげたいわ、この空』
「………見えて、いるぞ」

ぼそりと、マリーの声に応える。

『えっ?』
『どうしたの、マリー』

元々1つの人格から分かれたアレルヤとハレルヤとは違い、ソーマとマリーは全く別個の人格が無理に1つの身体に収められた存在だ。彼らの様に互いと対話する事など、ほとんど無い。どちらかが表に出ていれば、もう片方は意識の奥で眠りにつく。ずっと、そうして来た。そうしないと…バランスが、保てないのだ。それが人工的に造られた存在の、現実。

『今、ソーマが私の声に応えて来て…ソーマ、あなたも見てたの?』
「あぁ、お前の視覚を通してな…とても、美しいと思う。…上にずっと居たら、知り得なかった事だな」
『そうね…』
「旅も…悪くないな」
『良かった、ソーマがそういう風に思ってくれて』
『マリー、ソーマは何て?』
『空が、とても美しいって。あと、旅も悪くないって』
『そっか…うん、良かったよ』
『あっねぇアレルヤ、ハレルヤはどうしてるの?寝てるの?』
『え?うーんと…えっ何?そんなもんどうでもいい?………だそうだけど』
『ふふ、ハレルヤらしいわね』
『そ、そうだね…』




世界には、まだまだ知らない事が満ちている。もう外に出て行く理由は無いが、それでも、こうしてこの深みから空を見上げた様に、この場所から世界を見続けるのも、決して悪くはない。

そして、このまま穏やかな時が続けばいいと、そう思うのだ。
自分が出て行く必要の無い…つまりは戦闘をしなくても済む様な、そんな時が。


 

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