見世物小屋
超短文書き散らしブログ
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002. 初恋(テニス / 伊武)
これまで映画やマンガ等の虚構の世界の中でいくつもの”恋”というものを見て来たが、それら全ては伊武の中ではっきりとした輪郭を結ぶ事は無く、いつだってふわふわと極めて希薄で曖昧なままに、漂う様に存在していた。実感が、無かったのだ。そういった存在があるという、実感が。そんな得体の知れない不確かなものに何故そこまで情熱を向け、時に身を滅ぼす様な事が出来るのか全くもって理解不能だと、そう思っていた。
しかし、ある日突然気が付いてしまったのだ。
知らぬ間に音も無く忍び寄っていた何かが、胸の内を深く深く侵食している事に。自分の中に知らない別の何かが居て、自分の身体を勝手に乗っ取って動かしている様な感覚なのだ。目に映る風景全ての中に、同じ残像を探している。同じ声を探している。探すつもりなど無いのに、探している。手に入る、入らないの問題では無い。とにかく、あの存在の気配を感じていたい。ただそれだけで構わない。それだけを、全身でひたすらに求め続けてやまないのだ。
そして、ついに理解する。
恋とは、魂を喰われて自我を失う事なのだと。
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